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2009-10

映画「仏陀再誕」 速報感想レビュー (1) 大川宏洋氏 初シナリオの実力は……

アニメ映画「仏陀再誕」、封切り日、初日。
 劇場にはいると、人、人、人。
 しかも老若男女そろいぶみで、知った顔もいる。
 幸福の科学の講演会場かとみまごう映画館ロビーに、絶対に会員ではないミニスカの女の子や彼氏なんかがちらほら混じっているという面白い状況。

 聞けば、新作封切りは今日、これ一作だと言うから、全員映画「仏陀再誕」を見に来たらしい。

 ところで、小生、幸福の科学のアニメ映画を通してみるのは「太陽の法」以来である。
 久々の劇場は勝手が違う。
 ちび達にペットボトルを持たせていたら入場時には「館内で買ったもののみにして下さい」と注意されるわ、ロビーで弁当開こうとしたら、係員の姉さんが飛んできて「保健所の関係で、ここでお出しするもの以外は食事禁止となっております」といわれるわ、予告編が始まってからのんびり入ったら、真っ暗な映画館の座席がわからず、いちいちプレートに鼻をくっつけてしらべたあげく階段から客席の段差に転ぶわ、まあ、ひさしぶりの映画館で恥をかきながら、どうにか指定の席までたどり着く。

 運良く正面中程の座席(あんまり前だと首が痛くなるからなあ)がとれて、いざ視聴である。

 ところで、やはり映画はわいわい言いながらみんなで見るのが面白い。
 さらに、実を申さば小生、作劇は全くの素人というわけではないので、やや細かくシナリオにつっこみなど入れながら、以下、「ひとりブログ上上映会」を行いたいと思います。
 分不相応にも、厳しいことも書くかもしれませんので、うっかりお読みになった関係者は怒りのあまり心臓を破裂させぬよう、伏してお願い申し上げます。

●~オープニングまで

 『冒頭のシーン。
 授業中の女子校の教室。静かな授業風景。その中でうたた寝をする少女の怖い夢……』

 お。普通の映画っぽい。
 宗教映画の仰々しいオープニングではなくて、ホラー映画みたいな感じですな。
 そこへ、島本須美さん(山田先生)登場!
 うむ。いいー感じの先生役。こんな暖かい感じの先生がいたら人気が出そうだ。(キャラクターデザインでおでこがでてなければもっとよかった。)
 ここで島本さんの起用は、大正解。
 島本さんのあの声質とお芝居はやはり流石である。
 観客はこの声の力によって、恐怖のシーンから、穏やかな日常生活に一瞬で戻され、一抹の不安を抱きながら一息つくことになる。

 さて、画面は、
 『一転して和やかな日常の教室、授業中。
 手元の内職を没収されてみんなに笑われちゃう憎めないかんじの主人公。
 叱られて、主人公が目を落とした倫社の教科書(資料集か?)に描かれた、国王から帰依を受ける釈迦の図版と、島本さんの語る釈迦の生涯。
 それがクローズアップして、オープニングに突入。タイトルは言わずと知れた、
 「仏陀再誕」 』

 このオープニングの入り方がいい。
 今回、ものすごくスマートになっている感じがする。
 さらに、

『オープニングでは、パソコンに向かってキーを叩く姿(締め切りとか言っていたし、なにかの公募記事か? あるいは校内新聞?)、本棚の蔵書の背表紙などが写されることで、主人公がマスコミ志望らしいことがわかる。』

 ……おいおい、マスコミ志望って。
 日本のマスコミといえば、ネットの若い衆からは「マスゴミ」と言われ、幸福の科学と幸福実現党をもさんざん苦しめた、いわば悪玉の権化みたいなところでしょうに。
 いきなり、現実の敵のうようよする世界を、映画の中ではヒロインの志望就職場所にするなんて、なかなかやりますな。
 ここまでのシナリオはばっちりだ。
 この数分を見ただけでも、シナリオが、いままでの宗教映画と違って格段に無駄が無く、かつ自然に作られているのがわかる。
 インディジョーンズみたいな激しいつかみはないが、するりと世界に入れ、なにより普通の映画であることがアピールされている。
 「宗教団体の作る映画なんてどうせカルトだろう」みたいな発想で行った一般客は、意表をつかれるだろう。
 エンターテイメント系の作劇のポイントは、「お客の意表をつき続ける」「お客の想像力を上回り続ける」ことのはずだが、ここでは「宗教映画」というものへの一般の思いこみを、うまく逆手に取った感じがする。うまいぞ宏洋(ひろし)さん(総裁のご長男で今回の企画・脚本)。
 
 ……っていうか、島本さんの出番ここだけかい!?
 うわ、贅沢な使いかただなあ……。

●~学校から駅のシーン
 さて、朝のヒロイン宅。
 『血色悪そうなお父さんと、憂いのかけらもないような元気のいいガキんちょの弟、かいがいしいお母さん。
 立派な一軒家にすんでいるし、ヒロインはお嬢様学校の生徒みたいだし、まあ、中の上というか、やや上流家庭っぽい。
 お父さんは疲れているらしい』
、と。

 後でわかるのだが、欲を言えば、ここでもっとはっきり、ヒロインの父親が医者だと言うことを示したほうが良い。
 ……ヒロインの父親が唯物論者で医者だというのは中盤のとあるエピソードのポイントである。だが、そのシーンになって、いきなりその設定が出てきたような気がして、とってつけたような感じがした。ここは惜しい。
 【補足】10/18、もう一回見る機会があったので注目していたら、「夜勤」という単語が二回も出てきて、ここで医者だというほのめかしをしていた。ちゃんと目配りしたシナリオになっていたのだ。
 ただし、夜勤は医者だけの専売特許ではなく、かなり広い業種で行われる。製造業にもつきものなので、初見では、「現場の管理者かな」と思って見ていて医者だと気付かなかったのだった。

 (ちなみに、この見解をよそ様に話したとき、「もう少しはっきり医者だと示すのには説明台詞が長くなるのでは」、という意見をきいたのだが、この場合の説明台詞は二秒もかからない。
 たとえば、お給仕するお母さんにお父さんが「明後日から医療者の●●学会があるから出張するぞ」とか、夜更かしする娘への小言にかこつけて「最近お前ぐらいの年でも過労でうちに入院するのが多い」とかの台詞でもいいのだ)

 『そこへ、父の友人の新聞記者が自殺したとの報が。
 父の友人であり、ヒロインの尊敬する人物でもあると言うことで、学校に登校すると、新聞部(か?)でも、その噂で持ちきり。ヒロインが入っていくと、みんなが気を使ってわざとらしく話題を変えるあたりもいい。』

 ここでもうひとつ、『ヒロインは大学生の元カレがいた』ことも話されるが、ここでのもてはやされ方はちと鼻につく、かな?
 ……と思ったところで、そういう一部の観客の心を代弁するかのように突然どす黒い「調子にのってんじゃないわよ」の声が……そうそう、同級生から見たら、そう思う子もいるよなあ……って、いや、想像以上に、声が底冷えするみたいに黒いし、怖い!
 誰が言ったんだこの台詞、と見ると、ぞっとする言葉を出したのは、同級生にくっついている黒い姿。
 これ、何が怖いと言って、悪霊が言ってるんじゃなくて、にこにこと可愛らしく同級生を褒めている友達の一人の心の声に聞こえるのが怖い。
 まあ、悪霊というのは同じことを考えている人にひっつくと言われているので、同級生は、実は内心、そう思って居るんだろう。
 なのに、顔では一点の曇りもなく「どーしたの?」と純真そのもので笑っている同級生の顔が、怖いこわい!
 こ、これはすごいぞ! 
 いきなり良い子ちゃんばかりではなくて、かわいい顔してどす黒い内心の声を出している友達が身近にいて、その心の声が聞こえるというのは、いいホラーの導入だ。

『級友の後ろにいる黒い声に、びびるヒロイン。
 しかも、その後の授業で、歴史の時間で大虐殺の文面から、ものすごい当時の人びと、かつ殺されて地獄にいると覚しき人びとの思念がぞわぞわと……。
 思わず立ち上がり、逃げ込んだ保健室では、金縛りにあう。』

 この金縛りのシーンは、この映画でも屈指の出来だ、と思っている。
 首を回して正面をむいたとたん、体が動かなくなる。
 蛇口の水滴、過ぎていく時間、動かない体、カーテンにうつる影、そして小清水さんの見事な声の芝居……。
 やっとのことで起き上がるヒロインにまといつく無数の手がさらにおぞましくてナイスである。

 『保健室から逃げ出して、いきなり放課後。』
 (ここはもうワンカット一秒のショットだけでいいから、放課後になるまでの描写があっても良かった。保健室から逃げ出して放課後までどうしていたのかわからないのはちょっと不親切かなという気がする。
 でもそうすると、走っていくシーンを二つ続けて切迫感を出したのに、切られるようでテンポが悪くなるか。説明よりもテンポの良い流れを選んだのだな)

 『どういうわけだかみるみる霊視が聞くようになってしまった主人公の町中での様子の描写が非常にうまい。
 そして、駅のシーン。自殺した例の記者の人に見つかって、線路にひっぱりこまれて、飛び込み自殺の形になり、これは完全にはねられただろう……というところで。
 唐突にヒロインは霊界の裁判所の客席に立っている。』

 うまいぞ宏洋さん!
 この裁判官も、とても感じがよろしくて(現実世界とは大違いだな)、いかにもマスコミ人らしい「被告人」の自殺者とのやりとりはやや説明っぽいがわかりやすい。
 ここで「仏陀再誕」という単語が出てくることに、ハナマルを差し上げたい。
 お客には「これはどういう物語なのか」ということを早くに知らせた方が良いからだ。良い感じだ。

 『そして、現実に戻ったヒロイン小夜子が電車にぶつかる寸前、ホームに引っ張り戻す手が……!
 九死に一生を得た主人公。
 助けたのは茶髪の若者。』

 ……ここまで、申し分ない。
 どんどん高まる恐怖、わけもわからず巻き込まれていく主人公、もう、理想的なホラー映画である。
 ところで、主人公が助かったときに画面の端っこのモブ(群衆)の一人に、携帯を構えて、飛び込み自殺の事故現場を写メしようとしているようにも見える若いあんちゃんがいるのだが。……もしそうならちょっとこっち来い。説教してやるから。     

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