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松下幸之助氏の霊言集と回る「ディズニーリゾート」見聞記(3)
- 2011-07-24 (日)
- 幸福実現党観察日記
東京行きの当日がやってきた。
朝からテンション五倍増しぐらいの子供たちに頭を痛めながら、スケジュールどおりに行動する。
スケジュールを見ると何も問題ない。余裕を持って行動できる……と思っていたら、少しずつ遅れてはなぜか汗をかきかきばたばたと行動しなければならなくなっている。
舞浜駅についたのは遅れがちで、到着の感動などあらばこそ、急いで駅のウェルカム・センターにかけこみ、荷物をあずける。(ここで荷物を預けると、ホテルまで無料で運んでくれるらしい。このサービスが無料なのも、公式ホテルのサービス)もちろんここでも長蛇の列。
やっとのことでディズニーリゾートを周回するモノレールに乗り込んでディズニーシーへ向かいながら、おぼろげながら「ディズニーさん家にやってきたんだなあ」という実感が湧く。
なにせ、モノレールは窓の形がミッキーで、ソファーも愛らしい形と柄。JRの列車から乗り換えると、来訪者はいきなりディズニーワールドにひきこむのに一役買っている。
(写っているのはよそのお兄さんお姉さんです)
モノレールはディズニーリゾートをぐるり一周する形で走っていて、窓の外に見えるディズニーランドの巨大なアトラクション群はそれだけでも面白い。
ぐるっとひとまわりして、ディズニーシーにつくと、またばたばたとエントランスにかけこむ。ここでもまた長い列。
「……あ、予約してきたのに、こんなに時間が遅れてしまうのは、どこも長蛇の列だからか」、とようやく頭が回り始める。
ガイドさんとの待ち合わせ時間はもう過ぎていて、じりじりしながらエントランスで受付の行列に並びつつ、 家族をふりかえると、まだ受付がすまないうちに、上から下までびしっとえんじ色のスーツできめたお嬢さんが、子供たちや伴侶と話しこんでいる。
お、あれがガイドさんかー。こちらの到着が遅れたので、ここまで出てきて待っていてくれたのだな。
……っていうか、この暑いのに臙脂のベスト・スカート・帽子に白手袋ですかっ!
その事実にすでに驚愕。
気温は既にかなり高い。
うちでは、伴侶がしきりに「服がひんやりするスプレー」を子供たちの服に吹きかけまくって凉をとっているが、それでも滝のように汗が出る。
ところが、ガイドさんはばっちりお化粧をした顔に汗一つかいていない。
……ここですでに、プロフェッショナルの気配がする。
受付を通過してから、ガイドさんにご挨拶。
まず、こちらの希望を伝えて、三時間の計画をしてもらわなければならない。
だが、各家庭ごとに要望を聞いて計画を立てるわけだから、かなり時間がかかるのではないか……と思ったが。
ガイドさん、こちらが事前に作成・印刷してきた、要望用紙にざっと目をとおすと、瞬時に頭の中でコースを判断したらしく、用紙に目を通し終わると同時に、「承知いたしました」と、オプションのショーの予約をしに行って、すぐにツアースタートになった。
……で、できる!
一緒に回ってみると、余計その感が強くなった。
なるほど、これはディズニーリゾート最高峰のサービスといわれても納得する。
一定のアトラクションには待たずにそのまま乗れる。
ゴミ箱の場所も、飲み物やスナックの場所も、水飲み場の場所も完璧に覚えている。
園内では、一日に何回か、水上から水を派手に撒いて、お客さんを濡らして納涼させるショーがあるのだが、それも、「ここまでが水に濡れて、こちらが濡れない」ラインをちゃんと把握していて、最初に濡れない見物場所を確保して、濡れたくなったらここより前へ、という徹底ぶり。
……なんか、ものすごく有能な執事さんをつけているとこんな感じなのだろうか。
アトラクションに乗る時も一緒に来てくれて、キャラクターの紹介やら、乗り物や、物語の背景に関してなど、子供たちに解説してくれる。
こちらの希望として「子供の満足優先で」と、伝えておいたので、すっかり子守モードで相手をしてくれ、娘はガイドさんべったりである。
ガイドさんに聞いたら、この「子守機能」が親御さんにとってはありがたいらしく、一度ガイドさんををつけたらもうやめられず、リピーターがどんどん増えている、とのこと。
どうりで、開始後二~三時間で予約が全て埋まるわけだ。
また、子供達にとって最高に面白かったのがガイドさんがあちこちで立ち止まっては、園内のいたるところの「隠れミッキー」を探させたり、教えてくれたりすることだったらしい。
(帰宅してからも、「これが一番面白かった」と言いづめだった……他のアトラクションの立場がないぞ)
どうやら、園内には、タイルの模様や、貼ってあるポスターの渦巻きや、建物の壁、塀などに、ミッキーマウスの顔のシルエットを形取った模様がこっそり忍び込ませてあるらしい。
それは数㎝にみたない、小指の先ほどのものもあるが、掌ぐらいに大きなものもある。
あちこちで立ち止まってはガイドさんがそれらのヒントを指摘して、お客さんに探させるわけである。(解答は示さない。わからなくても次に行く。次回に来る楽しみ、ということを考えてだろう)
隠れミッキーは、園内の壁を穿ってあったり、あるいは実に自然に壁や床の模様にとけこんでいたものもあった。
ということは、あの広い園に、施工、もしくは設計の段階で、かなりのミッキーを隠したということか? お客さんを楽しませるために? ……すごい手の込みようだ。
そしてガイドさん、お客をもてなす会話も如才ない。
まあ、お客はディズニーリゾートに来ているだけでワクワクなのだから、観光ガイドさんをしていればそれだけでいいのだろうが、子供たちにあれこれと話しかけて飽きさせない。
実は、小生たち大人組も、この日一番面白かったのが「ガイドさん」の人となりだった。
ガイドさんは学校のことなどを子供たちにあれこれ聞いてくれて、息子が「実験クラブ」にいると聞くと、「私も小学校の頃、科学クラブにいて、べっこうアメとかつくったんだよー」と言う。
「へー、女子で理系かー」と興味深く聞いていたのだが……この人、じつはものすごく面白いことをやっている人だったのである。
ツアー後半になって、お客である私たちは、冷たい飲み物を買ってイスに座って涼んでいるが、彼女は立ったまま腰掛けようとしない。
それにしても、ずっと汗もかいている気配がないので、思い切って、
「お会いしたときから汗をかいておられないようだが、体質でいらっしゃいますか?」
と聞くと、
「ガイドツアーの最中はどんなに暑くても汗が止まる」のだそうである。
曰く、ガイド仲間の方々はみなそうであるらしく、朝、三十度という予報を聞きながら「あら、今日はすずしいわねぇ」「そうね、すずしいわぁー」と話していて、お客さんの前に出て「暑いですねー」と言われると「え?え?え?」と内心で大戸惑いしつつ、「ええ、あついですねえー」と話を合わせている、という話。
ご本人は「慣れちゃったんですねえ」というが、よくよく聞いてみると「足が痛む日も、ツアーに入るとぴたっと痛みが止まる」というので、思わず
「……女優さんですね」
と言ったら、「えええーっ!?」と思っても見ないことをいわれたという顔で笑っておられる。
こどもたちは冷たいものに夢中だったので、そこからガイドさんと大人組の話が始まったのだが、聞くと、ガイドさんはなんと、農大を出たばかりの方だという。
女子で農大。興味が湧いたので、「ご専攻は?」、と聞くと、
今はここに務めているが、在学中にしていた研究が非常に個性的で、教授からも戻るようにすすめられ、「君が戻らんのなら、後輩に引き継がせる」とまで言われ、「それは口惜しい」、ということで、十二月に試験を受けて院にもどることになっている。
だが、院の試験のためには英語が必要で、受験英語から一転した、会話重視の英語なので、かなり難渋している、とのこと。
すごいな。教授に引き止められる?
いったいどんな研究をしているのかと訊ねると、「植物の光合成に関して、今まで人工衛星を使わねばならなかった測定を、ポータブルの機材でひじょうに手軽にできるようにする」、というものであるらしい。
……面白い。
それ、実用化したら欲しい企業はたくさんありそうだ。
それを学生時代に発案して、研究し始めたのか。
この人、着想が優れているので、研究者としての成功もあるだろうに、なんでディズニーのガイドさんをやっているのかと非常に不思議な感があったのだが、拝見していると、研究職のいっぽうで、こうした世界にも惹かれているのだろう、ということがわかる。
気がついたのだが、ガイドさんは、非常に語り口がフランクで、接客接客していない。
このへんの呼吸も大変勉強になる。
「礼儀」とは、「相手の嫌がることは聞かない、いわない」ということだと、渡部昇一教授の著作で呼んだ記憶があり、大川総裁もそれを徹底しておられる、と感じることがある。(たとえば、アメリカで研修生時代、「日本語が出来る」というのが自慢の中年女性とターミナルでとなりあわせ、その日本語というのが、「アトランティス語だかなんだかわからない」ようなすさまじい言葉だったが、終始ににこにこ付き合って、全く訳が分からないながら、話に合わせて肯いていた、など、もはや「礼儀の神髄」に思われる)
これに加えて「サービス」となると、いかに「相手のニーズを掴んで応えきる」ことが加わる。
さらに、不愉快にさせない接客とは、それに加えて、「それらのポイントだけ守れば後は自然に接する」、ということがあらためて勉強になった。あまり作りすぎても、相手がくつろげない、ということだろうと思う。
三時間、ディズニーの広い構内をなんとかついて歩けたのもガイドさんのおかげかな、と思ったりする。
ガイドさんといっしょの最後には、オプションについていた、劇場の音楽ショーの席に案内してお別れになった。
シートでお別れの挨拶をして、ガイドさんが去っていく……のだが。
なんと、ガイドさん、数歩歩いては振り返って子供にいちいち手を振ってくれる。
もちろん子供はずっと手を振り詰め。
案内されて座った座席は入り口の反対側。
入り口からは一番遠い場所であった。
思わずその態度に目を疑い、
「……おいおい、いくらなんでもあの遠い通路まで、いちいち振り返って手をふったりはしないだろう。どっかでやめるだろう」
と思い、ガイドさんが手をふるたびに、
「……いや、これが最後だろう」
と思ってみているのだが、ガイドさんはほんとうに律儀に、大股で三歩ぐらい歩いては、振り向いて手を振る、というペースが入り口まで乱れなかった。
……すごい。
戸口にガイドさんが消えたあとの、子供のややさびしそうながらも、満足した顔といったら……。
……いや、お見事。
別れてからも子供は「あのガイドさんにもう一度会いたい」と言って聞かないし、手紙を出すと届くと聞くと、「絶対出す!」と言ってきかなかった。
……松下幸之助氏霊言、「JALの再建はまず、ファーストクラスから埋めよ」という。
そのサービスの要諦、というものを、三時間、拝見させて頂いた。
……ところで、個人的な難儀はこの後に来た。
ガイドさんがいなくなって、伴侶どのが、ひとこと。
「じゃあ、後のガイド、お願いします」
!?
……そうだった。 子供達の希望はまだ残っている。
……というわけで、劇場の本格ビッグバンドのショーがはじまったのだが、内容そっちのけで慌ててガイドブックを開き、なにをどう、どの順番でいくのが一番効率が良いか、暗い場内、舞台から漏れてくるライトにマップをすかしながら、ミッキーマウスのドラムを聞き聞き、ひとり、にわかガイドさんのしこみに必死なショーの時間となった。
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