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2011-07

松下幸之助氏の霊言集と回る「ディズニーリゾート」見聞記(2)

 さて、今回、ディズニーリゾートを回るにあたって、要望が一つあった。
 「一泊二日のいずれかに、個人ガイドさんを雇う、三時間の『プレミアム・ツアー』を組むこと」
 というもの。
 
 じつは、昨年、子連れで東京正心館へ行った帰りにディズニーランドに寄ったが、混み具合がはんぱではなかった。
 とにかく人が多く、人が多く、人が多く、「人を見に行った」と言っても差し支えない状態の園内。新宿の雑踏並みではなかったかと思う。
 とりあえずその日は、ただ園の中を散歩して、折良くやってきた昼のパレードを見せて、建物や船などの中を案内して遊ばせる式のアトラクションで一通り遊ばせたが、子供たちは最後に、
 「なんでもいいから何か一つ乗りたい」
 とごね出した。
 大人たちは内心「ぎゃっ! 無茶言うな!」と悲鳴を上げる。
 なにせ、どこも長蛇の列、どんなアトラクションでも一~二時間待ちの掲示が出ている。
 仕方なく、ディズニーリゾートの携帯サイトで、アトラクションの待ち時間を検索するサービスがあるのを思いだし、必死に検索、一番待ち時間の少ないトムソーヤーのいかだに乗って、島に上陸させて遊ばせて、なんとか満足させることができた。
 あの時の様子を考えると、通い慣れた遊び人ならともかく、「ディズニー素人」の大人たちが、一泊二日の間に子供をきっちり遊ばせて満足させることなど、とうていできそうになどない気がした。

 そこで、今回はそんなことにならないように、個人ガイドさんをつける、というのである。
 個人ガイドさんつきの「プレミアム・ツアー」とは、あらかじめ自分の希望を言って計画をたててもらい、三時間、ガイドさんの先導で、入りたいアトラクションには待たずにスムーズに回れるという嘘のようなサービス。
 ただし、三時間、二万一千円。
 ううう、まあ、仕方ないかなあ。
 ガイドさん、ガイドさんね……と、早速ネットで調べるが。
 ……ない。
 ガイドさんつきのプレミアム・ツアーなるものの申込窓口が、どこにも見当たらない。
 回ったのは、メジャーな楽天やら、旅関連のチケットのサイト。
 どこにも「個人で雇うガイドツアー」の情報がない。
 さんざんうんうん悩んで、ディズニーリゾートの本家のサイトへ行って、ようやく事情が飲み込めた。
 確かに、個人ガイドさんを雇う、プレミアム・ツアーというサービスはある。
 だが、ガイドさんを雇うには、最低でも二つの条件があるのだ。

 まず、ディズニーのサイトから、チケットやら宿泊やらがセットになった「パック」を申し込まないといけない。
 (このパックというのは、「ディズニーランド・ディズニーシー」の二つの遊園地の入場券と、移動のためのモノレール乗り放題チケットに加え、だいたい、朝食がつき、ショーの鑑賞券や、パレードの特等席が一~二枚つき、人気の乗り物に、いつでも待たずにすぐ乗れるファストパスというものが一人二枚~六枚ぐらいついている)
 さらに、宿泊施設は、ディズニーランド公式の「ディズニーホテル」というものが三つあるので、そこを選ばなければならない。

 ……パックの料金に関しては、だいたい、ショーの予約席、朝食、パレードの優待席、それからファストパス一枚につき、それぞれ数千円のサービス料がかかる、という計算をすると、だいたい納得できる。
 だが、「ホテル」として、周囲のそれとを比較してみると……
 ディズニー公式ホテルの施設は、周辺のホテルより施設的に劣る印象を受ける。プールもないし大浴場もない。
 小学生以下の子供連れだと、もう大人と子供が添い寝する、というのが前提で、セミダブルみたいなベッド二つか、よくて簡易ベッドがもう二つ付いている、程度の部屋を覚悟しなければならない。
 宿泊という機能だけだと、かなり不満感が残る。
 なのに、金額はディズニー公式ホテルがかなり割高で、周辺ホテルより倍ぐらい高いように感じる。
 しかし、ディズニーの公式の三ホテルは、ほかと劣らぬぐらい、予約がいつも入っている。

 その理由は、ディズニーホテルで割高な宿泊料金を払えば、「ディズニーランドのアトラクションをストレスなく回れる」からにつきる。
 楽しむために「待つ」というストレスが、ディズニーの公式ホテルに泊まることで激減されるのだ。
 先ほど上げた、個人ガイドさんのツアー申し込み権利だけでなく、
 「十五分早く、園内に入れる(←アトラクションはまだ動いていないが、列の先頭を陣取ることが出来る)」
 とか、ホテルによっては、ディズニーランドの真ん前に門があって、ぎりぎりまで遊べる時間が格段に長い、などのアドバンテージ。
 そしてお客はそれに大満足している。旅行サイトなどでも、この三つのホテルの評価はかなり高かった。

 徹底した優遇サービスによって、「価格が高くて設備はそれほどでもない」というホテルとしての欠点を遙かに隠しておつりがくる状態になっている。

 ……なるほど。
 これ、松下幸之助霊言にある、「サービスによる顧客獲得」の非常にわかりやすい例じゃないのか?
 開演前から、かなりの時間、並ぶ人たちがいるぐらいだから、「十五分早くはいれる」なんて、ディズニーランド好きにはたまらないのだろう。
 公式だけは、お客がディズニーリゾートで遊ぶときに、徹底的に、優先性に差を付けているわけだ。

 さらに、ディズニーの公式ホテルの中でも、ひときわ割高感があり、しかも、ショーの優先席やファストパスなどの枚数が少なく、あきらかに損だなあと思われるのに人気があるプランがあった。
 それは、
 「子供にシンデレラなどの、ディズニーのお姫様の格好をさせて過ごさせる『ビビディ・バビディ・ブティック』」(グレードによっては、服だけでなく、髪型からメイク、靴までばっちり整えてくれる) というビューティーサロンの最上コースの使用権がついたパックなのだった。
 一泊二日、まるまる朝から晩までお姫様のかっこうして遊ばせる。
 ……なるほど、アトラクションなどを多く回れなくとも、これなら強烈な満足感がある。
 (事実、当日は両親に手を引かれてキラキラした顔をしたちっこいお姫様にあちこちで出会うことになった。
 お姫様達はみな、この暑いのに、長時間の列に並ばされても、泣きわめく子なんて一人もおらず、幸せそうな顔をしていた)
 ほかにも、
「部屋がキャラクターをモチーフにしたベッドや装丁の部屋になっている」
 というものも、割高ながら人気が高いらしい。

 この、最後の二つのパックは、ディズニーリゾートの本質をきわめて明確に示しているような印象を受ける。
 これを見て、「ディズニーランド」というものがなんで人をここまで魅するのか、なんとなく門外漢にも理解できる気がしたのだ。

 「ディズニーランドとは、夢の国」
 と言われている。

 夢の国、というのは、小生たち宗教書を読む人間にとっては、「霊界・天国」にほかならない。
 言葉を換えて言うなら、ディズニーリゾートは、
 「四次元の、楽しい(時々ちょっと怖い)魔法の満ちた天国・霊界をこの世にそのまま出現させ、体験させる」空間なのだ。
 吉原が男性にとって「この世の極楽」と言われた如くに、「ディズニーランドはこの世の極楽」、なのだ。
 「この世の極楽」という言葉が単に「夢の国」と言われているに過ぎない。
 この、「極楽、天国、霊界を体験する」……というのは、おそらく、宗教と非常に近しい経験、満足感ではないのだろうか。

 松下幸之助氏の生前の著作には「人間には、信仰の本能というものがあって、それを満たされることも望みの一つではないか」という趣旨の言葉があった。
 もちろんディズニーランドにて感じる「宗教的満足感」は、そう深いものではなくて、たとえば、サンタクロースは実在する、的な信仰に近しいものである。
 だが、「善意で満たされ、景観は麗しく、いつも楽しい気分で居られる世界が、どこかにある」、という、少なくとも善意の霊界に対する信仰だ。

 ディズニーランドに来れば、その世界に対して、難しい学びも、しかつめらしい信仰や作法もいらず、ただ遊びに来るだけで参入できる。
 お客は、この世から乖離した霊界であるディズニーランドに、生きたまま赴き、その「天国性」を一秒でも長く体感し、その世界にストレスなくひたるためなら、二倍、三倍のお金を、平然と出す。
 そして、従業員やサービスは、「夢の国」というキーワードを徹底するという意識に末端まで満ちている司祭に等しい、ということだ。
 善意の魔法の世界に、その身そのままで参入できること……おそらく、ディズニーリゾートに関しては、それがすべての集客の鍵なのだ。

 人は皆、天国から生まれてくる、と幸福の科学では説かれている。
 ならば、ディズニーランドでは、人がみな潜在的に持っている、ふるさとである「四次元の天国への郷愁」が、お客たちも意識せぬまま満たされていて、それが魅力になっているのではないか……というと言い過ぎだろうか。

 ロバートシュラー牧師の書籍だっただろうか。
 著者の牧師が、とある大きな仕事に挑もうとしていたころ、同時期に、広大なオレンジ畑を焼き払い、そこに誰も見たことのないディズニーランド、というものを建てようとしたウォルト・ディズニーという男が居た、ということが感慨深く書いてあった。
 ディズニーランドなどかげも形もない頃、よくわからん遊園地のために、土地を買って、オレンジやクルミの畑を焼き払う……ある意味、狂気にも見えただろう。
 だが、そのときの彼には、金儲けだけではなく、そのときまだ彼の頭の中にしかない、この世から乖離した霊界を現出させたくて、させたくて、ならなかったのではないか。
 彼の頭の中には、ありありと現出するべき「天国」のイメージが存在したに違いない。(それは実際四次元と言われる霊界に実在したものだったのだろう)
 最初、彼にしか見えなかったその世界が、いまやこうして、世界中に成就している。

 そもそも、この事業は、昔からある、季節の祭りなどで、宗教が担ってきた仕事の一端なのではないかという気がする。
 じっさい、ウォルト・ディズニー氏は、「謝肉祭」の悪い側面を取り払ったような施設を作りたい、と思っていた、という話を読んだ。
 その理想は叶って、今のこの宗教なき時代に、ディズニーの世界は、「天国」の代名詞のようにして人を集め、癒し、善意に溢れた世界の心地よさを、訪れる人すべてに対して伝え続けている。
 そんな場所を、一人の人物が作り上げた、というのは感慨深い。
 同じように、完成図が自分の頭の中にしかなくて、人から見たら夢物語のような大きな事業に取り組もうとする人間には、ディズニーランドの成功物語は魂を奮わせ、大きな勇気を与えてくれる。
 先日公開された手塚治虫氏の霊言で、「ただのネズミのキャラをここまでのスーパーヒーローにした手腕」「魔法の世界を現した」ことに関する業績への讃辞が語られていた。言うまでもないことだが、やはり、ウォルト・ディズニー氏は傑物なのだ。

 (……それにしても、お姫様のかっこうして一泊二日ってのはすごいなァ。おそらく、たゆまざる企業努力によって、顧客のニーズを捕まえているのだろう。だけど、絶対にこんなの、服やアクセサリーが大好きな娘なんかには見せられないぞ……ということで、ディズニーリゾート行きの話はことごとく子供達に内緒にすることになり、子供達が居るときにやむなく話をする時には「……あー、例の『ねずみ屋』の件だけど」と暗号まで使って話をするハメになったのだった)

 ところで、肝心の、ディズニーランドに関する、ガイドさんつき個人ツアーについてだが……。
 ……みごと、予約に失敗しました(泣)!

 ここまで調べて、なぜ失敗したのか。
 ガイドさんの予約は一ヶ月前から、とのこと。
 それまでにパックと宿を決めて決済し、(←「予約だけ」とかいうわけにいかず、「カードか振込で決済・入金しないと予約できない」という強烈な仕組みだったことも付記しておく)準備はすべて終えていた。
 だが、予約当日、「おっ、今日がいよいよ予約開始の日だな。でも、三時間二万一千円のツアーなんか、そうそう申し込みがあるわけがないよなあ」と思い、予約受け付け開始日の午後にサイトにアクセスしたら……。
 ……すべて埋まっていた。 ガイドさんの予定、一泊二日ぶん、すべて。
 ……今までの努力が全て水の泡になったとばかり、小生、ほぼ卒倒状態。
 青ざめてしばらく思考停止していたが、はたと、「ディズニーリゾートに遊園地が二つある」ことを思いだし、「ディズニーランド」の隣の、「ディズニーシー」のほうにアクセスしてみると、午前中、ガイドさんの空きがある!
 「よ、よかった……」と涙目になりながら、なんとかそちらを押さえることが出来た。

 ……おそるべし、ディズニーリゾート。もうこっちはアトラクションに乗る前から心拍数は上がるわ、涙目になるわ、卒倒しかけるわで、充分スリル味わいまくりである。

 そしそ、頭の中で、「うん、ディズニーシーっていうの海がテーマだって言うし、 いまは夏だし、暑いから水のそばがいいし、この前ディズニーランドはいちおう歩いてまわったからもういいと思うし、そうそう、こっちのほうが新しいんだよね、しかも総工費はディズニーランドの倍以上だし……」と、怒濤の如く、必死に家族への言い訳を考えたことは言うまでもない。

 (……ディズニーランドの宗教性、ということを書いてみたが、同じく宗教サービス機関としての幸福の科学を見ると、ディズニーのアトラクションにあたるものは、たとえば、幸福の科学では総裁の法話である。
 どこの支部でも、本部でも、精舎でも、これは同じものが見れる。
 見れるはずなのだが……じつは、各支部・本部・精舎によって、明確な集客の差がある。隣どうしの支部であっても普段から集客に数倍の開きが出ているところも存在する。これら、集客力のない支部を補うため、総裁はさまざまな種類の魅力的な法話を行ったり、それでも集客が出来ないため、講義を在家の拠点や布教所に流す、などしてカバーしておられる印象を受ける。
 松下氏は、霊言の中で「幸福の科学では職員の努力が足りないから総裁に大変な負担がかかっている」というのは、そうした事実について語っているのではないか、という気がするのだが、いかがだろうか)

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