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2011-11

TPPと、大川総裁の「マスコミの終焉」の予言(4)

 前回まで、「日本の書籍はどうしても、二大問屋を通さなければ本を売ることができず、海外と違って、「書籍の再販制度」によって、書籍の値段がずっと同じという拘束がかかっている」と書いた。
 日本の心ある書店も、この制度に縛られて、全く独自性が出せない。

 だが、大川総裁が「問屋制度はその制度は閉鎖的要因にしかならず、アメリカには理解されないだろう。流通経路は正常化し、開放すべきだ」
 と説いた方向に、すでに時流は向かっている。

 まず、ネット書店・Amazonのブレイクがその一つである。
 本を売るネットの書店であるAmazonだが、ここは、「送料を値引きする」という形で、事実上のディスカウントをしている。
 さらに、サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の記事をまとめて、書籍にして出している、「東京糸井重里事務所」のように、Amazonと直接に取引する会社も現れた。
 また、東京糸井重里事務所ではAmazonに限らず、発行している書籍を、取次を通さずに直販で書籍を売っている。htp://www.1101.com/books/for_store.html サイト「ほぼ日」は、一日で140万ぐらいのアクセスのあるサイトである。
 こうなれば、問屋の世話にならなくても販売力がある。
 インターネットの出現と相まって、こんなこともできるようになったのだ。

 そして、電子書籍。
 電子書籍は、「問屋」を通さない。
 しかも、自費出版でも手軽にできる。
 たとえば、日本では、一般的に、著者に支払われる印税は1割といわれている。
 千円の本だと、一冊売れたら百円が作者に支払われる。
 もっとも、駆け出しだと5%以下とか3%程度だろうか。それが日本の出版界だった。
 そこへ、昨年、こんな話が出てきた。

【キンドル「印税70%」の衝撃 不況の出版界には大脅威】2010/1/22 20:46
http://www.j-cast.com/2010/01/22058564.html Amazonが出している「キンドル」という電子書籍は、「印税7割を作者に払いますよ」というのである。(普通は三割程度。これでも高値だ)しかも、販売価格はペーパーの書籍の最安値より、最低でも2割安い。作者も読者も良いことずくめだ。
 (もっとも、キンドルは、すべての著者に一律三割とか七割の印税を払うわけではなく、かなり細かな制約があると聞くが)

 さらに、
【アマゾン電子書籍契約は妥当か無茶か 大手は反発、中小は興味示す? 2011/11/ 1 19:47 】
http://www.j-cast.com/2011/11/01111860.html?p=all 『Amazonは、出版社に対して、「売り上げの55%をアマゾンのものとすること、書籍より価格を低くすること、そして、出版社が著作権を保有すること」などという、日本の業界ではどれも行われてこなかったシステムを採用する、という通達を出してきた』という。
 これに対する日本の大出版社の反発はかなりのものがあると聞く。
 これに対抗して、著者を囲い込もうとする出版社もあって、
 ちょうど昨年の今ごろ、講談社は、各書籍の著者に、『電子書籍を出版する際の印税率を「15%」とする』『著作物の利用を制限する』とする「デジタル的利用許諾契約書」をおくりつけて、反発を買っていた覚えがある。

 時代が、総裁の言葉にようやく追いつき始めた。

 こうして、出版界では、問屋と、大出版社の体制を脅かすようなシステムが、すでに日本に入り込んでいる。
 そこへきて、TPPである。
 TPPの概要を示したレポート(たとえばhttp://www.iti.or.jp/kikan81/81ishikawa.pdfなど)を読むと、
 TPPの協定は、明確に「サービス」「知的財産権」などの分野にも及んでいる。
 知的財産権とは、ずばり、出版・テレビ・音楽など、マスコミのジャンルだ。
 もしそれを盾に、アメリカや他国の企業が日本の出版界になだれ込んできたらどうなるか。
 彼らは、日本が守り続けた「独占禁止法による再版価格の維持」など、「アホか、こんな制度」というだろう。
 そして、自国で販売してきたように日本の市場にも参入するべく、「こんな制度は即刻改正しろ。そうでなければ協定違反だ」と言ってくるだろう。
 再販制度が消滅すれば、書店による価格の自由競争が始まる。
 総裁曰く「アメリカは、日本の問屋制度を理解しない」、という事情を合わせれば、東販、日販は、その存在意義を失う。
 TPPによって潰れる可能性があるのは、医療、農業だけでなく、東販、日販といった、日本の出版界に君臨していた「二大問屋」なのだ。
 もちろん、その「開国」は、「問屋」だけでなく、出版界自体をも揺るがすものとなる、と言われている。

 (……次回あたりで終わりたいと思います)

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