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2011-12

この冬、スピルバーグを負かした日本のアニメとは(2)

 うちは、かなり頻繁に一家で映画を見に行く。
  きっかけは幸福の科学で映画をやるようになってからで、そのとき、最近の映画館が昔と違ってずいぶんと居心地良くなっているのに気付いた。
 また、映画なら子供から祖父母まで、三世代家族全員で楽しめる。
 そこで、多い時は月に五回以上は見にいっている。

 そのぐらいの頻度で見に行っているのだが、『映画 「けいおん!」』については、
「こんなに混雑した映画館なんて子供の時以来だ!」
 という状況を味わった。

 とにかく、映画館に行くと、エントランスというか、ロビーが凄い。

 若い人、人、人。
 こんなに若い人が映画館に集まったのを見たのは久しぶりだ。彼らは、みな同じ『映画 「けいおん!」』の、受付で配布されたペーパーを持っている。(映画を見て、出てきても、エントランスの人数は減らなかった)

 中に入ってさらに更に驚く。
 ワーナーでは、ずらりと並んだいくつもの大きな上映ルームに、さまざまな映画がかかっているのはご存知の通り。
 『映画 「けいおん!」』は、一つのルームでは入りきらずに、二つのルームを同時に使っての上映である。
 「まあ、もっとも、上映館が普通の二分の一しかないからなあ」
と思いながら、上映ルームに入ってみると……なんと、いちばん後ろから最前列二列目ぐらいまで、お客がきっちり入っている。(二つあるルームのどちらも、こんな感じだった)
 ……いや、恐れ入った。
 毎年何回も見に来ている『プリキュア』ですらこんな入りは一度もない。
 若い人にまじって、小学生低学年のこどもたちも、ちらほら見かけた。
 「なぜ子供が来るのだろう」と、若い人はふしぎそうに見ていた。
 もともとが、深夜アニメだからだ。
 だが、親からすれば、これは暴力も性も描かれていない、ほのぼのした学園生活のアニメなので、安心して子供に見せられるのだ。子供も1話見ると、「続きが見たい!」というので、結局さいごまでDVDを借りて見てしまう。うちも子供にせがまれた。

 また、作品の内容のせいか、場内はとてものどかな雰囲気で、若い人がみな、子供・老人連れのうちらに気をつかって通路をあけたりしてくれた。野放図な態度を取ったり騒ぎ立てたりする若者など一人もいない。
 上映中に、うちの娘が画面を見て「あっ、トンちゃん(部で飼っているカメの名前)だっ!」などとしょっちゅう絶叫したりして、親はその都度青ざめたが、若い兄さんたちからはくすくす笑いが起きていた。
 「ああ、彼らは、自分たちを夢中にさせるものを、小さなこどもたちも楽しんでいるという状況が、意外と嬉しいのだな」、と気がつく。
 そして、うちの娘は、ディズニー映画でさえあきて騒ぎ出すことがあるのに、『映画 「けいおん!」』の地味な物語を、最後までくいいるように見つめていたのだった。

 次の日、別のワーナーに見にいった、スピルバーグの「タンタンの冒険」は、どうだったか。
 ……エントランスはと言えば、いつものようにお客が少なく、ゆったりとしていて、こどもたちは天井に流れる予告編を見ながら、走り回って追いかけっこしていた。
 上映ルームに入ると、お客は入っていたものの、中段当たりに二十~三十人程度。
 いつもの映画館の入りだ。
 ただ、『映画 「けいおん!」』に比べて、中年以上の観客がだんぜん多い、といったところか。『映画 「けいおん!」』の入りには比べるべくもない。

 では、そんなに内容が違うのか。

 映画を見比べると、まず、スピルバーグはもう、冒険映画のお手本になる、見事なシナリオだった。
 そもそも、原作は有名な児童文学……絵本というか、コミックで、安心してみていられる。
 内容は、沈没船の財宝のありかを記したメモをめぐってのかけひきと冒険。
 主人公の若い新聞記者、タンタンが船の模型を露天で手に入れた瞬間から、追っ手がかかり、トラブルに巻き込まれる。
 冒頭のひきこみから、一瞬の隙もなく、えんえんと派手なアクションと追いかけっこの連続。
 伏線の張り方も上手いし、行く先々で次々に展開する仕掛は面白さ満載だ。
 タンタンたちは、ピンチにつぐピンチを思ってもみないアイデアで切り抜ける。船、海、砂漠、中東の国と展開する、壮大な風景のCGは、十分にお金がかかっている。
 回想のはさみ方も申し分ない。
 主人公のタンタンはさわやかで行動派のいかにも「らしい」主人公。かたや、財宝の鍵を握る「船長」は、飲んだくれのダメ男だったのが、冒険を重ねて人間的に成長する。
 タンタンの白い飼い犬がキュートに大活躍するところなんか、実に、子供や動物に花を持たせるのが上手いスピルバーグらしい。さすがハリウッド。娯楽映画の王道だ。
 最高によくできた王道娯楽映画、タンタンの冒険、予告編はこちら。
 よくできているので実写と勘違いするが、実写ではなくスピルバーグ監督の初めての3Dアニメ映画。
 3Dアニメでは、日本はとうていハリウッドには敵わないと痛感させられる。
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 ……ううむ、予告編だけでもやっぱり面白い。「これが売れずに何が売れるか」、という作品だ。
 これがまさか、日本のオタク向けのアニメ映画に敗れるなどと、誰が想像しただろうか。

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